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2018年12月10日18:32
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島根大学 , 教育 , 現代美術 , 研修
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日頃の活動の発表をする機会が2つありました。
1つ目は、昨年サヴァティカル研修で行ってきたカッセル・ドクメンタとヴェネティア・ビエンナーレについて、学部のアカデミック・カフェで報告しました。
内容は、
「現代美術って何?-国際芸術祭から見る現代美術」と題して、
国際芸術祭の紹介を通して現代美術作品の様相を伝え、その作品成立の根拠としてのコンセプチュアルな理念や、インスタレーションなどの表現形式についての見方や考え方について発表しました。写真を多く使って、美術が専門でない参加者が、今まで捕えられていた美術の概念から解放され、美術による新しい世界の見方が広がるようにという意図です。
コーヒーを飲みながら、柔らかくでもアカデミックに。
2つ目は、名古屋で行われた教科内容学会でのプロジェクト研究の発表。
教科内容学(教員養成系大学の教科専門教員が、その専門内容を教育実践における教科内容として構成し、体系化すること)において、美術が対象とする内容や構造の意味とそれを知る方法を確定するし、そこから美術の教科内容の原理を導き出し、それを基にした授業実践例を発表しました。今回は、その認識論としての定義の共通構造案を提示し、各教科が同じ構造で定義することによって、教科間の特質の違いを見出すよう試みました。
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2014年12月30日11:19
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ワークショップ , 島根大学 , 教育 , 研修 , 美術館
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大原美術館
前回のtopicsが美術館巡りを半年分まとめて記録したのと同じように、今回「美研のあれこれ」もこの夏からの半期分をまとめて書くことになってしまいました。
もっとこまめに書かなくてはと思いつつ・・・・まぁ今年中に間に合っただけでもいいとして。
1.オープンキャンパス(8月7日)
島根大学教育学部は8月7日(木)にオープンキャンパスを開催しました。
午前中の全体説明に続いて午後は各専攻で個別入学体験が開かれました。
「美術専攻」では教員による専攻の説明(下の①②)と学生による授業の説明や交流(下の③④)、教員による持参作品の講評(下の⑤)という内容で実施しました。
専攻・コース入学体験 「ようこそアートの世界へ」
① 美術専攻4年間の学びについて
美術の各分野の紹介のほか、パワーポイントでカリキュラムの特徴・学生生活・実習や専攻別体験などを説明しました。
②推薦・前期入試について
推薦入試の内容と前期入試について説明し質問を受けつけました。
③絵画室などの施設と学生作品見学
学生が絵画室、彫刻室、デザイン室などの施設とそこに展示した授業作品を紹介し、授業の内容などを説明しました。
④在学生との交流会(写真①)
在校生15名ほどが絵画室で参加生徒と交流を持ちました。授業のこと、課題のこと、学生生活のことなど和気あいあいと話をしました。
⑤「持参作品の講評」
参加者が持参したデッサン、水彩画、油彩画、彫刻・工芸作品、ポスターなどのデザイン作品等を専攻の教員が講評・アドバイスをしました。
写真①
③の学生による施設や授業作品の解説はとても好評です。学生自身の口から大学生活のことや入試のことなど直接話を聞けるので、参考になりまた親近感がわくようです。
また私たち教員は特に⑤の「持参作品の講評」に力を入れています。たくさんの高校生の作品を見、またそれを通して高校生や先生方との交流を深められたら幸いです。
また島根大学教育学部美術専攻について興味のある方、質問等のある方は新井までメール(arai@edu.shimane-u.ac.jp)にてご相談ください。
なお美術専攻のデジタルパンフレット2014年版が、島根大学教育学部ホームページの以下のサイトでご覧になれます。
URL http://www.edu.shimane-u.ac.jp/ より「専攻分野」→「美術教育」→「美術教育専攻パンフレット2014年度版はこちら」
また、私たち教員スタッフについては同じく島根大学教育学部ホームページ「教育研究スタッフ」→「美術教育」でご覧になれます。
2.美術館ワークショップ(8月9日〜12日)
今年も島根県立美術館で子ども向けのワークショップを開催しました(写真②)。
これは3年生の専攻別体験学修の一環で、前期の「造形授業構成研究」授業の中で企画、題材設定、演習等をし、夏休みに美術館で実習を兼ねてワークショップを開くものです。
このワークショップで学生は美術題材の設定から実際の説明・指導ばかりでなく、様々な参加者との対応までを体験し、すぐ後期に控えている教育実習への基礎を築くものとなります。
今年は8月9日から12日の4日間、同時期に企画展として開催されている、「浮世絵」展とリンクして、「めざせ版画職人 色を重ねて浮世絵ランプ」と題して、木版の印刷を重ねた作品を使ってランプを作るワークショップを開催しました。(写真②、③パンフレット)
(写真②)
(写真③)
あらかじめ作ってある木版を多色刷りして、ランプシェードにするものです。とても複雑な手順なので時間もかかり、その分創作の時間が少なくなったのが残念だったですが、3年生8名の説明や事前の準備、また息もぴったりで気持ちの良いワークショップになりました。
3年生はこの経験を生かして9月から教育実習をしますが、学校教材の場合は、ワークショップの題材と違い、受講者が自らの独創での制作活動を多く入れなくてはいけません。またその時にすぐできてしまうのではなく、悩んだり葛藤したりする中で自分なりの造形物となるような活動を保証する指導が必要になります。そうした美術活動の本質を取りこんだ題材、授業案を創ることが教育実習では必要になってきます。
3.教育実習 (8月28日〜9月30日)
3年生の教育実習Ⅳが附属中学校で行われました。
8人の学生が4人ずつ1年生と3年生の担当になって授業題材を考え、1か月間の実習に取り組みました。
1年生は「抽象作品を作ろう−オノマトペをいかして−」。
ニョキニョキやビヨーンなどのオノマトペから連想されるかたちを土粘土で抽象作品として表現する制作です。抽象は中学生にとって難しい題材ですが、擬音のイメージをもとにすることで、形を立体的な抽象として表わすことにうまく結びつけました。制作の要点として①ボリュームを持つこと②動きを作ること③バランスを見ることの3点を説明して、純粋形態としての抽象に生徒の感覚が向かうように指導しました。充実した実践で面白い作品が生まれたと思います。(写真④⑤⑥)
(写真④)
(写真⑤)
(写真⑥)
3年生は「針金で創ろう立体アート」。こちらも立体の抽象作品制作です。針金という線材を直線、曲線などいろいろな形に変形することで、動きを持った抽象作品制作を行いました。こちらは、制作の要点を①線の動きで空間を作る②線のつながりで面を感じる③全体のバランスを作る、の3点として、やはり感覚的な抽象制作への目を生徒に持たせるようにしました。(写真⑦⑧⑨)
(写真⑦)
(写真⑧)
(写真⑨)
今回、1,3年とも題材が抽象の立体作品制作となりましたが、両学年とも立体としての造形要素とをきちんと取り入れ、既成概念でできる説明的、観念的な形にしないで、形そのものの面白さ、美しさを創造し感じるよう指導できたことが成果だと思います。
4.島根大学公開講座 −シルクスクリーンでオリジナルプリントを作ろう−
(10月30日〜11月13日)
毎年秋恒例の島根大学生涯学習講座、今年は「版画講座」−シルクスクリーンでオリジナルプリントを作ろう−と題して3週に渡って実施しました。
この講座、はじめのころは油彩画をやっていましたが、最近は版画講座シリーズで、一昨年の木版リトグラフ、昨年の厚紙版ドライポイントでした。今年はシルクスクリーン。
自分だけのオリジナルマークをデザインして、それをシルクスクリーンのカッティング法で製版します。できたら皆でTシャツやハンカチ等の布にプリント。
最後はみんなで寄せプリントをしました。(写真⑩⑪⑫⑬)
このシルクスクリーンのカッティング法は、制作手順が変化に富んで面白く、しかも初心者でもそれぞれ自分の構想に合わせて皆うまく作れるので、楽しくそして達成感のある制作になります。
(写真⑩)
(写真⑪)
(写真⑫)
(写真⑬)
5.「教員養成モデルカリキュラムの試行的実践と改善 第2回シンポジウム」
(於:鳴門教育大学)に討論会評価者として参加しました。
2014年12月3日、鳴門教育大学にて「教員養成モデルカリキュラムの試行的実践と改善 第2回シンポジウム 『学生に教科の本質をどう伝えるか −中学校教員養成における教科専門科目のあり方−』」(写真⑭)が開催されました。
(写真⑭)
このシンポジウムでは鳴門教育大学が長年取り組んでいる、教員養成教育のためのカリキュラムや教科内容授業研究の成果の発表と、またそれに対して協議が行われました。
今回、そのシンポジウムでのテーマとして「中学校教員養成における教科専門科目のあり方」に関する発表と討論会が行われ、私はそれを受けて最終評価をしました。
教員養成大学・学部の教科専門教員の行うべき授業については、2004年の在り方懇の答申以来、教科内容学研究という形で研究が重ねられてきました。現在鳴門教育大学を中心にそのテキスト化が進められていますが、今回のシンポジウムは、教科専門教員の授業内容を、教員の実際の発表をもとにしてもう一度検証しようとしたものです。
私は何人かの教科専門教員の授業実践報告と討議の後で、現在の教科専門教員の立場と課題を、○専門教育に対する教員の意識の転換、○専門内容の教育実践の立場からの再構築、○教科内容の構成原理としての学問研究のメタ化と「専門的視座」の獲得、学問史修得 などの点を中心にまとめました。(写真⑮⑯)
今や、教員養成大学・学部の教科専門教員の授業に関するこのような論議は避けては通れないものとなっています。
(写真⑮)
(写真⑯)
鳴門教育大学は島根からはかなり遠く6時間以上かかります。シンポジウムの翌日、島根に帰る途中、倉敷に途中下車し大原美術館に行きました。
ここに来るのはもう6回目か7回目になります。おなじみの作品と再会しました。
ゴッホからセザンヌ、ピカソ、マティス、モディリアー二、クレー・・・高校生のころ、毎晩図録や画集を喰らいつくように見ていた作品たちです。これらの作品との出会いから私は美術に夢中になり、いつの間にか絵とともに歩む人生を選んでしまうことになってしまった。近代美術との出会いは私にとって運命だと思います。
大学を出てからは、自分の絵画探求上の方向として現代における絵画の在り方を追求する中で、近代美術は超克すべき存在となりました。近代の個人主義、人道主義、造形主義を乗り越えないと今の自分の絵画を確立できないものとなりました。
それからは展覧会でもずっと現代美術を追い続け、最近では知らないアーティストの新しい作品を求めて、ガツガツと展覧会を回っていますが、その日ばかりは近代絵画を懐古しました。たまにはいいでしょう。
ところで、大原美術館の分館は日本美術の専門館で、やはり懐かしい作品がたくさんあります。その地下を行くと現代美術が展示してあり、その一番奥には、あまり知られていないけど、今をときめく作家の作品−東島毅、堂本右美、津森みゆき、会田誠・・・・−がひっそりと展示されています。いいものばかりです。ここに来るとさすがに血がさわぐ。
ということで今年も年が詰まったところで慌てて「美研のあれこれ」をまとめて書きました。
来年はきちんと報告できるようにしたいです。
よいお年を!
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2011年11月24日17:10
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ハロウィングッズ集合
1.卒研中間発表会(10月5日)
今年もまた恒例の卒業研究中間発表会がありました。(写真①)
発表者は4年生8名(絵画専攻2、デザイン専攻1、彫刻専攻2、工芸1、美術教育専攻2)。
この中間発表では、3年後期から約1年間、演習 Ⅱ 授業やゼミなどで研究してきた卒業制作(論文)の概要を全専攻生と教員を前にして発表します。
来年2月の発表会及び美術館での展覧会が最終発表の機会になりますが、研究段階としてはこの時期がもっとも大切で、この発表会までに研究作品のコンセプトとスタイルを確立し、どのような卒業作品となるかを示さなければなりません。
(写真①)
今年も絵画ゼミ生の研究経過をちょっとだけ紹介すると、
Fさんは、不安や虚無感などのネガティブな感情が、弱くて脆い人間の真実だと感じ、その不安定な感覚を、自分が幼少期から経験してきた記憶–蝶や虫の羽、植物の葉などとの関連–から形象化しようとしています(写真②)。
Fさんのような、若く元気なお嬢さんがこのような感覚を内に携え、それを作品化しているところが今日的?と言えるでしょうか。ウエットだけど軽く、曖昧だけどキュートで、鑑賞者の心にシンと沁み入るような形体と空間は生まれるでしょうか。
Hさんは一般の人が何とも思わない、あるいはかわいいとかおいしいとか感じるもの、例えば人形とか苺や桃などのくだものとかに不快感を覚えていました。今ではトラウマとなっているそのような気持ち悪さを画面にぶちまけることにより、理解され難い個人の感覚を作品化することをテーマとしています(写真③)。
多量のメディウムや油彩絵具を使い、抽象化させた画面はかなり迫力が出てきました。ただ画面を気持悪く見せればいいのではなく、いわば捨て鉢な叫びのようなものが、個人のものでしかないものを「ふーむそういう感覚あるかも」と思わせることができるかがポイント。
あと2カ月!2人のこれからの精進が期待されます。
(写真②)
(写真③)
2.公開講座-版画講座(10月13日~11月10日)
生涯学習センター主催の一般向け講座ですが、今年も昨年に引き続き「ドライポイントプレートで凹凸版刷りを楽しもう」と題して版画の講座(全4回)を開きました。(写真④)
基本的にはドライポイントですが、版に厚紙を使いそれにニードルやビュラン、ルーレット等の道具で線描する(いわゆるドライポイント版画)の他に、紙や布などのコラージュを施して様々な表現効果が楽しめます。(写真⑤)
また1つの版で凸版刷り、凹版刷り、凹凸版刷りの3種類の印刷をすることで、それぞれ違った表情の作品ができ、刷りも楽しめる版画です。(写真⑥)
たくさんの作品ができました。できた作品を飾って発表会です。(写真⑦)
(写真④)
(写真⑤)
(写真⑥)
(写真⑦)
3.教科内容学研修会 「増井三夫氏講演会」(11月9日)
私たち教育学部教員5人で共同研究している「教科内容学研究の開発と推進」プロジェクトも3年目を迎えました。
今回の研究会は聖徳大学児童学部教授、増井三夫氏による講演会と討論会を行いました。
演題は「教科内容学の現状と課題内容構成研究」。
増井氏は長年にわたり教科内容学の研究を進められており、現在内容構成学研究において先導的役割を果たされている方です。
「教員養成における教科内容学研究」(日本教育大学協会特別研究助成事業)、「教科専門と教科教育を架橋する教育研究領域に関する調査研究」(文部科学省先導的大学改革推進委託事業)等数々のプロジェクトの中心となって多くの著書や論文を発表されています。
今回の講演会では教科内容学研究の歴史や現状、また現在の論点やご自身の立場などをご講演いただきました。
その後の質疑応答では、教科内容研究は「学」と成り得るか、教科専門教員による教科内容授業の在り方とはといった問題が出され活発な議論がなされました。
島根大学教育学部で2004年から行われている「教科内容構成研究」授業を進めている私たちにとって、今回の講演会は教科内容学について初めて網羅的に把握できたばかりでなく、私たちの授業が全国的趨勢の中でどのような位置にあり、どのような意義があるのかを知り、また「教科内容構成研究」授業の在り方を省みる絶好の機会となりました。(写真⑧)
(写真⑧)
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2009年12月13日0:15
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旅行 , 海外 , 現代美術 , 研修 , 美術館
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−ロンドンのコンテンポラリー・ギャラリーはすごい!−
この研修旅行のtopicはいろいろ書きたいことがありますが、まずはやはり美術の話題で行きましょう。
その中でもホントすごかったロンドンの現代美術ギャラリーについて報告します。
ロンドンでは9月5日にヘイワードギャラリー。6日にサーチギャラリーとサーペンタインギャラリー。10日にホワイトチャペルギャラリー、ホワイト・キューブ、バービカン・センターに行った。(ICAセンター、ジャーウッドギャラリーにも足を運んだが展示替え期間のため閉廊だった)
ともかくどれもこれも大きい。ヘタな美術館より大きいくらい。銀座のせせこましい画廊とは全く別のものです。バービカン・センターやICAセンターは演劇や音楽もある巨大な総合芸術センターです。
まずヘイワードギャラリーのこの行列を見てください(写真①)。「WALKING IN MY MIND」という展覧会を見るため並んでいる人たちです。画廊に入るのに並ぶのは初めてでなんだか心配になり、隣に並んでいる人にホントに展覧会のために並んでいるのかどうか思わず聞いてしまった。
(写真①)
この展覧会は奈良美智、草間弥生、塩田千春の3人の日本人を含む10名のグループ展。
奈良、草間、塩田の作品は日本でそれぞれの大々的な展覧会を見ているので、なにもここまで来て見る必要もないのだが、この3人が世界のトップアーティストとして外国で取り上げられるのを見るのは悪い気はしない。
ただ3人とも他のアーティストに比べるとおとなしくてスケールが小さい。良く言うと繊細なのだろうが、他の巨大でハチャメチャなインスタレーションに比べると印象が弱い。
草間の中庭のオブジェ群もかわいらしくて強迫観念の欠けらも感じられない。ただヘイワードギャラリーを出てテムズ河沿いをぶらぶらするとそこの並木がどれも草間模様に飾られていて、これは素敵だった(写真②)。
(写真②)
次はサーチギャラリー。今世紀始めダミアン・ハースト、ゲイリー・ヒュームなどいわゆる「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBA)」を次々と生み出したサーチギャラリーは、テムズ河沿いの一等地から2008年にロンドン南西のチェルシー地区に引越しをしている。(ウディ・アレンの「マッチ・ポイント」を見るとダリ・ユニバース横、ロンドン市庁舎内のサーチ・ギャラリーが出てくる)
入り口からして格調が高い(写真③)が中に入るともっと驚く。
(写真③)
「Abstract America : New Painting and Sculptures」という展覧会をしていたが、広々した壁面に作品が気持ちよさそうに展示されていた。この贅沢な空間。それも入場無料の上、写真撮影OKだ。(写真④⑤⑥)
ヘイワードの展示に比べると冒険の少ない人選だとは思うが、いずれもしっかりした力量を持った作家たちで、張ったりでない確かさを感じて私には好ましかった。
(写真④)
(写真⑤)
(写真⑥)
サーチ・ギャラリーを出て2階建てバスに乗りビクトリア駅まで。それから歩いてバッキンガム宮殿を経て、広大なハイドパーク(写真⑦)を歩くと、疲れてきた頃ケンジントン・ガーデンにあるサーペンタインギャラリーにたどり着く(写真⑧)。このギャラリーは毎年夏の間、ギャラリー脇の公園内に有名建築家がパビリオンを作ることで知られているが、今年は日本人の妹島和世と西沢立衛の設計事務所SANAAの作品だった(写真⑨)。数年前にも同じく日本人建築家、伊藤静雄氏がこのパビリオンを手掛けて話題になった。そういえばロンドン滞在中にBBC放送で隅研吾氏が、北京などに建設した竹の建築を中心にインタヴューを受けていた。ロンドンが竹ブームだとは言え、日本人が国際的に活躍する姿を目にするのはやはり頼もしく思う。
(写真⑦)
(写真⑧)
(写真⑨)
ギャラリーでは「ジェフ・クーンズ」展をやっていた。今や超大御所となった現代美術家の展覧会にここも満員。
「ポパイシリーズ」と題された展示は、クーンズお得意のジャンクカルチャーの代表であるようなビニールの浮き袋を使ったオブジェだった。
文句ナシに面白い!こんな他愛もない物がこれだけ鑑賞者の気を引き止めるのはまさにマジックとしかいいようがない。たまたま翌日、テート・モダンで水槽にバスケットボールを浮かべたクーンズの出世作を見て、その確かな歩みを確認した。ただあの浮き袋が何億円?という値で取引されるのかと思うと、大物になりすぎた?
ホワイトチャペルギャラリーはイーストエンドの地下鉄「ホワイト・チャペル」駅をでてすぐ。(写真⑩)
ここでは「エリザベス・ペイトン−Live Forever」展の他、「ブリティッシュ・カウンセル−The Third Dimension」展などを展示していた。小品ではあるがエリザベス・ペイトンが大量に見られた。
(写真⑩)
そこから地下鉄でバービカン・センターに。(写真⑪)
ここはホントに巨大な文化施設で、ロンドン交響楽団とBBC交響楽団のホール、劇場、3つの映画館そして3つのギャラリーなどが入っている。その中の一番大きなギャラリーで「Radical Nature」展が開催されていた。ひとつひとつの「自然」をテーマにしたインスタレーションが大きくて見応えがあった。
このセンターの中庭にこんなインスタレーションが(写真⑫)。天気がよく皆昼休みを楽しんでいる。奥の建物がすぐセンターのレストランになっていて私もそこでお昼を食べた(写真⑬)。イギリスもアメリカと同じように1プレートに全部盛られるのが基本。肉、チーズ、パプリカなどはおいしかったけど、タコは一緒にしないで欲しいし、バターライスにヨーグルトをかけたものはチョット・・・・・・。
(写真⑪)
(写真⑫)
(写真⑬)
そこからまた地下鉄で「ホワイト・キューブ」へ。最近はここ「ホワイト・キューブ」を中心にイーストエンド地域のギャラリーが注目を集めているそうである(写真⑭)。ただその先まではよくわからず行けなかった。
帰りは「ベイカーストリート」で地下鉄を降り、子供のころから大好きなシャーロック・ホームズの家に寄ってパイプを燻らせてきました(写真⑮)。
(写真⑭)
(写真⑮)
以上、ロンドンのギャラリー巡りの巻でした。
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2009年10月6日23:36
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旅行 , 海外 , 現代美術 , 研修 , 美術館
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学部のサヴァティカル研修制度を利用して9月4日から25日までの3週間、ロンドン、
バルセロナ、マドリッド、アムステルダム、ブリュッセルを巡り研修をしてきた。
今回の研修は、各地で美術館、博物館や現代美術系ギャラリーの展示を観覧し、歴史的作品の再評価、再確認(自分の今までの経験との再会とも言えること)と、現代の美術状況の把握を主たる目的としたものであった。
上記の目的のため研修計画を立て、実際には次のような施設の観覧・資料収集をおこなった。
9月4日−9月11日 イギリス・ロンドン
○公立美術館
大英博物館 テイトギャラリー テイトモダン ナショナルギャラリー
○現代美術私設ギャラリー
ヘイワードギャラリー サーチギャラリー サーペンタインギャラリー
ホワイトチャペルギャラリー ホワイト・キューブ バービカン・アートセンター
(ICAセンター、ジャーウッドギャラリーは展示替え期間のため閉廊だった)
大英博物館
テイトモダン
9月12日−9月15日 スペイン・バルセロナ
○公立美術館
ピカソ美術館 バルセロナ現代美術館 ミロ美術館
(アントニ・タピエス美術館は改修工事のため閉館していた。また当然のことながらサグラダ・ファミリア、カサ・ミラ、グエル公園をはじめとするアントニ・ガウディの建築やカタルーニャ音楽堂等、他のモデル・ニスモ建築の見学も行った)
池に映るサグラダ・ファミリア
バルセロナのギタリスト
ミロの彫刻(ミロ美術館)
9月16日−19日 スペイン・マドリッド
○公立・私設美術館
プラド美術館 ティッセン・ボルネミッサ美術館 ソフィア王妃芸術センター
(街全体が世界遺産になっているトレド観光)
プラド美術館
王妃ソフィア芸術センターの
リクテンシュタイン
9月20日−9月24日 オランダ・アムステルダム
○公立美術館
国立博物館 ゴッホ美術館 レンブラントの家 市立美術館ビューロー
○現代美術私設ギャラリー
ギャラリーガブリエル・ロルト、ギャラーリーナイン等アムステルダム・ヨルダン地区を中心に現代美術ギャラリーを観覧
(市立美術館は改修工事のため閉館中だった)
アムステルダム・ゴッホ美術館
・コンセルトヘボウの空
アムステルダム・トラム
9月22日 ベルギー・ブリュッセル
○公立美術館
王立美術館
ブリュッセル・芸術の丘からの眺め
滞在中毎日歩きまわり上記のようにかなり多くの美術施設の観覧・見学・資料収集を行っている。上に書いてない世界遺産を含めると40か所くらいにはなると思う。
今後この成果についてこのTOPICSでできるだけ報告をしたい。ただ、ここには報告書を載せる必要はないので、個人的に感じたこと・経験したことの中で実感としておもしろかったことを書いてみたいと思っている。
もちろん専門の作品鑑賞について述べたい部分もあるが、それとともに今回は誰にも頼らない個人の一人旅としての海外旅行ということが大きな特徴であり、私自身にとってそこで起こった数々のエピソードが実にこの旅行の醍醐味であったと思っている。
それらはつまり海外での行動の取り方、具体的には乗り物の利用や移動の仕方、そこで起こった数々のアクシデント、出会い、実感としての文化や民族の違いなどである。
1度もタクシーを使わなかったし、日本食も食べなかった。地下鉄のプリペイドカードを擦り切れるほど使った。機内荷物は届かなかったし、ビールかけ強盗に会い、リコンファームの予約番号は違っていた。
今、私の中に渦巻いているそれらの出来事をなるべくトピックごとにまとめて、今後折を見てレポートしていきたい。できるだけ単なる報告ではなく、一人で海外に出かけ方へのアドバイスになるような視点で。