美研のあれこれ⑧ + 展覧会巡り などなど
埼玉県立近代美術館
1.大学美術教育学会大分大会
10月20日(日)、大分での第51回大学美術教育学会大分大会で口頭発表をしました。タイトルは「『平面授業構成研究』について −島根大学教育学部における『教科内容構成研究』の取り組みをもとに−」。私自身が行っている「平面授業構成研究」という授業の教科内容学的内容について、教科内容学の歴史や概念を下敷きに、また島根大学教育学部独自のカリキュラムである「教科内容構成研究」授業の特徴を踏まえたうえで、紹介、発表しました。
ここ3年間、自分なりに研究してきたことをまとめたものです。大学美術教育学会での発表は初めてだったのでよい経験になりました。(写真①)
写真①
2.別府現代芸術フェスティバル2012「混浴温泉世界」
大分での学会口頭発表を終えたのち、別府で開催中の「別府現代芸術フェスティバル2012『混浴温泉世界』」を鑑賞してきました。このフェスティバルは大分に行くまでは知らないものだったのですが、こんな温泉町でこんなにしっかりした現代美術のフェスティバルが開かれているとは驚きでした。
別府の各地で8つのプロジェクトが組織されていましたが、そのいくつかを紹介します。
PROJECT5 アン・ヴェロニカ・ヤンセンズ(写真②)
百貨店のワンフロアーの真っ暗な空きスペースを霧で満たし、そこにプロジェクターで光をあてています。どこか知覚に深く響く不思議な空間になっています。
PROJECT3 シルバ・ブグタ (写真③)
商店街のビルの地下。暗いスペースに真っ黒なぼこぼこに見える塊が壁にかけられていて、何か音が聞こえます。この塊に見えるものは何千本というマイク。そこから詩的な言葉が発せられています。この辺りのバーで以前繰り返し語られた会話をイメージしたものだそうです。
PROJECT7 小沢剛(写真④)
別府の町の中心にある別府タワーには、「アサヒビール」という文字がネオンサインとして輝いていますが、その「アサヒビール」という6文字のどれかを組み合わせてできる言葉を書き並べています。一見意味がなさそうですが、別府に集まる約50カ国の人たちの誰かが使う意味ある言語となっています。
PROJECT6 クリスチャン・マークレー (写真⑤)
別府湾に突き出した突堤に何十もの旗が並べられています、そこにはどれも音色の違う鈴が付けられていて、中を通ると何とも言えない気持のよい音に包まれます。マークレーは昨年のヴェネチアビエンナーレで金獅子賞を受賞した作家です。
それぞれの作品のコンセプトがしっかりしていて、見ていて納得のいくものばかりでした。まるで私への学会の発表のご褒美のようなひとときでした。
写真②
写真③
写真④
写真⑤
3.島根大学生涯学習講座「版画講座」 −木版リトグラフを楽しもう−
毎年秋恒例の島根大学生涯学習講座、今年は「版画講座」−木版リトグラフを楽しもう−と題して、木の版でリトグラフ版画を4週に渡って実施しました。
プライウッドグラフというベニヤ板と、油性のソリッドマーカーを使って(写真⑥)リトグラフ版画を制作するものです。従来のリトグラフ版画を、合板を使うことによって制作工程を比較的簡単にし、また銅版用のプレス機で印刷することができるようにしています。リト特有の多くの薬剤は使わず、また製版インク盛りも省略し、手軽に制作できます。また水彩絵の具で色をおいて楽しむこともできます(写真⑦)(写真⑧)。
最後に刷った作品を並べて発表会(写真⑨)。
これまでこの講座では、油彩、厚紙版ドライポイント、この木版リトグラフとやってきて、さて来年は何にしようか今から考えています。シルクスクリーンをまだやってなかった。
写真⑥
写真⑦
写真⑧
写真⑨
4.東京・埼玉美術館巡り
今年の「CAF.N展」に合わせて東京・埼玉の美術館を回ってきました。
[CAF.N展]の様子については[exhibition]欄、作品については欄を更新しましたので、そちらをご覧ください。今回の作品は、昨年のカラコロ工房個展以来試みている、半透明なビニールを重ねて作ったものを天井から吊るすインスタレーションでした。両側から見られ、それぞれが違った様相をしています。回りを巡って見るとともに、作品を包む空間全体が問題になるものです。しかしながら今回の展示ではそれを考慮してもらえませんでした。通路のような半端な場所に、壁に近付けて掛けられているので、全く作品の意図したところが表現されず散々なものでした。改めてインスタレーションの展示の難しさを感じました。だけど自分で展示しないで他人任せではやっぱりダメですね。展示係の方は会場全体のことを考えてやっているわけなので。今まで平面の作品だったので送ったきりでもなんとか済んでいましたが、インスタレーションはやはり自分で設置しないと。
それはともかく在京時にできる限り美術館を回りました。見た展覧会は「HOME AGAIN」原美術館、「気ままにアートめぐり」ブリヂストン美術館、「始発電車を待ちながら」東京ステーションギャラリー、「日本の70年代1968-1982」埼玉県立近代美術館、「田中一光とデザインの前後左右」21_21デザインサイト、「アートと音楽」「風が吹けば桶屋が儲かる」東京都現代美術館、「さわひらきWhirl展」神奈川県民ホールギャラリー、「川俣正展」Expand BankARTの9つの企画
展。
その中で断然面白かったのは、東京ステーションギャラリーの「始発電車を待ちながら」展です。新装なった東京駅で(写真⑩東京駅丸の内北口の天井)、東京ステーションギャラリーも再開されました。その記念展で、東京駅あるいは鉄道に関連した作品が集められていますが、それが(いつかの千葉の展覧会のような)こじつけではなく、テーマに関わりつつそれぞれの作品本来の内容がしっかり語られていて、素晴らしい展示でした。ともかく見ていて楽しい。どれもが人間の奥深くにある本性をユーモアやウイット、あるいは憂愁を交えて描いていて、どれも心にしみるものでした。
写真⑩
特にクワクボリョウタの、暗闇の中を光をつけたプラモデルの電車が走りながら、周囲の壁に、風景に見立てたカゴや洗濯バサミなどの日用品が、その光によって大きく映っては消えるインスタレーションは最高!また、パラモデル[PARAMODEL]のプラレールのインスタレーション、大洲大作の写真作品なども秀逸でした。
次に、Expand BankARTの「川俣正」。80年代のスーパーヒーロー川俣の作品を、私はまともには今まで見ていませんでした。写真では何度も見ていて、あまりピンと来ていなかったのですが、本物を見て、その迫力にこれは見解を変えなければならないかなと思いました。ただ、(「横浜トリエンナーレ」の会場として、見に来て以来久しぶりの)BankART Studio NYK会場の一階は、写真⑪のようにかなりできていて、素晴らしかったのですが、いかんせん始まったばかりで、ほとんどの作品、例えば建物外部(写真⑫)とか二階会場(写真⑬)とかはまだ骨組みしかできてなくて残念でした。1枚のチケットで何度でも入れるということだったけど、もう行けないしなぁ。1月頃見てみたいものです。
写真⑪
写真⑫
写真⑬
21_21デザインサイト(写真⑭)の「田中一光とデザインの前後左右」はもう堂々たるもの。間違いない。田中一光の仕事が日本のデザイン界に与えた影響や果たした役割の大きさを肌で感じられるものでした。
写真⑭
現代美術館の「アートと音楽」は楽しめます。良くできていました。あとは撮れた写真だけを挙げておきます。
21_21デザインサイトの廣村正彰の「His Colors」(写真⑮)。田中一光に捧げる、色のインスタレーション。
さわひらき展(神奈川県民ホールギャラリー)のビデオ作品(写真⑯)(写真⑰)。
原美術館での「HOME AGAIN」展、エリカ・ヴェルズッティの作品(写真⑱)。同じくデュート・ハルドーノのインスタレーション(写真⑲)
写真⑮
写真⑯
写真⑰
写真⑱
写真⑲