広島・美術館観覧ツアー(2009/6/28)

3年のゼミ生を連れて広島の美術館巡りに行って来ました。
島根からはほとんど高速を使うことなく片道4時間です。
4年生はずっと卒制のゼミをやってますが、教員採用試験が近づきそれに追われていたり、大学院の試験準備に入っていたりで皆忙しく、今回は3年生を誘って広島に行きました。

もともと現代美術館の「Martin Creed」展を見たいと思って企画したのですが、3年生の勉強のために「ひろしま美術館」も観覧することにしました。
ひろしま美術館は、倉敷の大原美術館や東京駅近くのブリヂストン美術館と並び、近代美術の良品を収蔵している美術館として有名ですが、学生の美術史の知識として、これらの美術館収蔵の写実から造形的抽象に至る近代作品の流れは、自分の制作の根拠や客観的位置、またそれを超えた独自性などへの視点を定める為に、基本として知っていないと困るところです。
授業でもいろいろやっているし、自分の興味でこのくらいの基礎知識は勉強しているはずですが・・・・・でも4年生が教採の専門教養の勉強で今更ながら美術史に苦労をしているのを見ると、危ないものです。
なので、復習の意味でひろしま美術館を一廻り。

ひろしま美術館
ひろしま美術館

昼はお約束の「お好み村」でお好み焼き!
学生は皆はじめてだったので、屋台の多さにかなりコーフンしていました。

お好み村
お好み村


お好み焼き
私たちのお好み焼き

それから比治山にある現代美術館に行き、お目当ての「マーチン・クリード」展を観覧。

現代美術館
広島市現代美術館
「クリード展」ポスター
「マーチン・クリード展」ポスター

マーチン・クリードは2001年に「ターナー賞」を受賞しているイギリスの現代美術作家で、コンセプチャルな試みを、インスタレーション、サウンド・インスタレーション、映像、絵画などさまざまなメディアで表現しています。
それは、たとえば紙をくしゃくしゃに丸めて、透明なボックスに入れて展示したり、丸めた紙をまた伸ばして絵画のように壁に展示したり、メトロノームをミニマルに並べて違う速さで音を刻ませたりと、本当に些細なものをそのまま提示する作品です。
その軽さ、遊び、ユーモア、何気なさはフッと見る人の気持ちをほぐしてくれるし、また私見ですがそこには人としての諦観が漂っているようにも感じられその辺にも共感するものでした。
それにしても、「嘔吐する人を繰り返し映したビデオインスタレーション」には思わず貰いゲロをしそうになってしまいました。学生も気持ち悪そうでしたが、それでもみなこの展覧会を楽しんでいました。
(でもなんであんな色とりどりのゲロが吐けるんだろう?)

学生がこのような現代美術を興味を持って楽しめるようになるため、私は現代美術を「絵画内容構成研究」という授業に取り入れて教えています。
コラージュやマティエールといった近代後期に発生した絵画技法から、コンセプチュアル・アートを基軸としたインスタレーションやアース・ワークなどの新しい形式の美術までを講義し、またそのコンセプトやスタイルの理解のために演習制作をさせています。
それは単に現代美術の理解だけでなく、教員として授業題材の根拠を美術の歴史と専門性にしっかり置くだけの知識と力量を備えさせるためです。結果的に、うちの学生は現代美術に意外と馴染み、興味を持って学修するようになっていると思います。

帰りは気持ちよさそうに寝ている学生を尻目に、一人島根に向けハンドルを握る私なのでした。

行動展ツアー(2009/5/3)

島根県ではなかなか現代作家の作品を見る機会が得られないのが悩みのタネ。
「行動展」は在野系公募団体の中でもレベルが高く堅実で技術、発想力の高い作品がみられる団体ですが、その行動展だけが、在野系の公募団体ではこの地方に巡回します。
なので勉強のために、毎春、ゼミの学生を連れて行動展を見に行っています。
ちょうど暖かくなる頃なので、見学後少し足を延ばして、大山(だいせん)にある植田正治写真美術館も見学。そのあと大山を上がって「大山みるくのまきば」でソフトクリームを食べたり牧場で遊んだりするのがいつものルートです。

「行動展」では大画面の構成、題材の扱いやスタイル、描画材料の用法やコラージュ等の技法、マティエールの工夫など絵画の実際の制作態度や方法などを学生に解説しながら回ります。
「新制作」「独立」「二紀」展なども見られるといいのですが。

また残念ながらこの地方ではこのような公募展だけでなく現代美術もめったに見られません。
広島現代美術館、大阪の国立国際美術館、前回のトピックスで紹介した東京の現代美術展などを見に行くよう勧めてはいますが。
ともかく現代の作品の実際に触れなくては取り残されるばかりですし、自分の作品制作ばかりでなく、先生として美術の授業にも現代美術の考え方(コンセプチャルなもの等)やスタイル(インスタレーションや野外環境制作)などを生かして取り入れなくてはいけないわけで、このような鑑賞会だけでなく、私の授業の中でも現代美術を扱うよう努めています。

植田正治写真美術館から見た大山
植田正治写真美術館(高松伸設計)から見た大山。大山が水に映るよう設計されています。
植田正治写真美術館
全体像はこんな感じ。
「大山みるくのまきば」でフリスビーをする学生
「大山みるくのまきば」でフリスビーをする学生


「大山みるくのまきば」で植田正治の演出写真風に撮った記念写真
「大山みるくのまきば」で植田正治の演出写真風に撮った記念写真

 

 
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