美術館&ギャラリー巡り 2016.10.8-10.12

トーマス・ルフ展

東京国立近代美術館
2016.8.30-11.13
ルフについては、2003年の森美術館の開館記念「ハピネス展」で、ぐにゃぐにゃした極彩色がうごめいているような画面(写真)を見て-そしてそれがネット上のポルノ漫画を加工して出来たものと知って以来気になっていた。
初期の「Portrait」から「ma.r.s」「jpeg」など最新作までの18のシリーズ125点を網羅した大展覧会。
18のシリーズどれもがルフの写真というメディアの可能性への挑戦で、それぞれがみな手法もスタイルも違うのに、どれも視覚や認識の深さを感じさせる展覧会だった。またそのシリーズごとの展示構成も美しく楽しめた。

トーマス・ルフ展
トーマス・ルフ展
トーマス・ルフ展
トーマス・ルフ展

塩田千春『鍵のかかった部屋』

KAAT神奈川芸術劇場
2016.9.14-10.10
第56回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館帰国記念展と題して、ヴェネチア・ビエンナーレでの展示を再構成したもの。もちろんスペースも違うので、ヴェネチアのときの船はなく赤い糸と鍵を暗い部屋に構成した展示。その重層的に糸が絡み合う空間は、いつもながら深い思いに満たされているようで、そこにいるだけで何故だか感動的な幸せな気持ちになり去りがたいものだった。

塩田千春『鍵のかかった部屋』
塩田千春『鍵のかかった部屋』
塩田千春『鍵のかかった部屋』
塩田千春『鍵のかかった部屋』

新・今日の作家展2016「創造の場所-もの派から現代へ」

横浜市民ギャラリー
2016.9.22-10.9
最終日に駆け込みで。横浜市民ギャラリーは桜木町に移転してちょっと遠くなったけど、実は駅からマイクロバスが出ていて便利でした。
ここは穴場です。連休で新美術館なんか混み混みだけど、こちらはしずーかに見たいだけ見られました。しかも無料です。
斎藤義重、榎倉康二、菅木志雄、池内晶子、鈴木孝幸の5人。前の3人は大御所で、見慣れた現代の古典とも呼べる作品でしたが、コンパクトに仕切られた個展形式の展示はとても新鮮に見られました。個人的には榎倉の写真の作品が好きです。70年代の3人に対して池内の細い糸の作品、鈴木の歩きながら収集したモノの展示は、柔らかで軽く「今」の気分でした。

新・今日の作家展2016
新・今日の作家展2016

杉本博司「ロスト・ヒューマン」

東京都者写真美術館
2016.9.3-11.13
杉本の作品は水平線のやつと、劇場の真っ白に発光したようなスクリーン、自然史博物館のジオラマなどすごく好きだが、その後のいろいろごちゃごちゃやっているのはどうかなぁと思っていた。写真というメディアの中で堂々と勝負できるのになぜ?という気もしていた。
でもこの「今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない」(カフカのパロディ)という展示にはホントびっくりした。最近の杉本の誇大妄想狂的な発言等にはあまり興味を持っていなかったけど、この展覧会の「人類と文明の終焉」というテーマは、ここまで徹底すれば立派だなぁと感心するほどだった。展示は、杉本が妄想した、文明が終わり人類が滅びることになる33のシナリオに従って、これまた杉本が収集した様々な、実に膨大な量のオブジェがインストールされている。人類が滅亡するそのわけは、物理的、生物学的、経済的、政治的あるいは自然現象など様々で、本当にこれで滅亡するかもと思えるようなリアリティのあるものから、奇想天外で滑稽なものまであって、その振り幅が芸術になっているのかなぁと思った。ともかくここまで破滅的にやられると、「そうだよなぁ、人類なんか滅亡すればすっきりするかもなぁ」と思ってしまう。
下の階の<廃墟劇場>と<仏の海>もすごいです。

杉本博司「ロスト・ヒューマン」
杉本博司「ロスト・ヒューマン」

クリスチャン・ボルタンスキー「アニミタス-さざめく亡霊たち」

東京都庭園美術館
2016.9.22-12.25
久しぶりの庭園美術館。新館ができました。今回のボルタンスキーの作品は本館の旧朝香宮邸をめぐる中で、どこからともなくいろいろな人の声が、それもよくわからないが不安そうな様子で聞こえてくるもの。まさに「さざめく声」による作品です。古くて由緒あるアール・デコ様式の建物で聞こえるその声はまさしく亡霊の声に思えてくる。2階は心臓音の作品(心臓の音とともに電球が赤く光る)と、影絵の作品。
新館では、いろいろな人の目が印刷されている半透明な布の中を歩く作品と、稲藁が敷いてある部屋の中央にスクリーンがあって、そこに風鈴が揺れて鳴っている映像が流れている作品。
私は基本的にボルタンスキーは好きで、この展覧会の5種類の作品もどれもがボルタンスキーの特徴をよく表していて、それがバランスよく構成された素晴らしいものだと思った。

クリスチャン・ボルタンスキー
クリスチャン・ボルタンスキー
クリスチャン・ボルタンスキー
クリスチャン・ボルタンスキー


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