美術館&ギャラリー巡り&美研のあれこれ⑫
今年も米子―東京、何回も往復しました
2015.11.13
ゲルハルト・リヒター展
ワコウ・ワークス・オブ・アート
(写真撮影OK)
ヴォルフガング・ライプ展
ケンジタキギャラリー
ライプの代表作の一つに「ミルク・ストーン」がある。白い矩形の大理石の表面が薄くシャーレ状に削られていて、そこに牛乳が、表面が平になるように注がれているインスタレーションである。
2003年、国立近代美術館でのライプの回顧展で初めてそれを見た。一見ただの四角の石なのだが、よーく見ると表面に牛乳が張られている。それに気づいた時鳥肌がたった。幾何学的でミニマル、冷たく完結した世界と、有機的で豊穣、むせかえるような生命が溶けあっている。
その展覧会が猪熊弦一郎現代美術館に巡回して来た。
「ミルク・ストーン」の牛乳は腐るので毎日取り替えなくてはならない。猪熊弦一郎現代美術館はその役をボランティアとして募集したのだった。期間中毎日一人ずつ。
当時の私のゼミの院生が真っ先に応募して、その初日に当たった。彼女は石の表面に牛乳を注ぐ為だけに、始発の電車で島根から丸亀まで行き、開館前に牛乳を注いで帰って来た。
一見無駄に思えるその行為は、ライプの世界観を、身体と心で丸ごと感じとる事で、めったに味わえない素晴らしい体験ではなかったかと思う(実際はどうだったか聴きそびれたが)。今も制作活動を続けている彼女の血肉の一部になっていてくれたらと思う。
2015.11.13
ニキ・ド・サンファル展
国立新美術館
長く絵描きをやっているにもかかわらず、絵描き仲間はともかく、その他の美術関係者にはあまり知り合いがいない。その希少な知り合いの一人が増田静江さんだった。
もう30年も前の話だが、グループ展をみてもらったのがきっかけで、当時増田さんが上野の自社ビル内に開いていたギャラリー「スペース・ニキ」で個展をさせていただいた。
ギャラリー1階の入り口には大きなニキ・ド・サンファルの「ナナ」が飾られていた。
その頃増田さんはニキの作品を精力的に集めていて、那須に大きなニキの美術館を作る企画を着々と進めていた。
会うたびにニキのリトグラフの絵葉書を頂いた。ある時、渡辺豊重作品のユーモアが好きだと話したら、私の個展に渡辺豊重さんを呼んでくれたりした。
当時は勢いでなんでもやっていてわからなかったが、私の制作が細々とでも続けてこられたのは、増田さんのような方が、節目節目にちょこっ、ちょこっと出てきて後を押してくれたからなのではないかと、今になって思う。
今回のニキ・ド・サンファル展の展示作品の半分以上はYOKO増田静江コレクションのものである。彼女の長年の情熱がここまで大規模な展覧会を可能にした。増田さんがこれを見たらさぞ喜んだろうなと思いながら会場をまわった。
ところでウーマンリブのうねりの中で、女性の自由と解放を、自身の人生と作品で体現した(もちろん苦悩と闘いの果てにだが)ニキの展覧会らしく、来場者の8、9割は女性だった。特にご年配の方が多かった。なんだか間違って女性専用車両に乗ってしまったような感じだった。
2015.8.15
島根県立美術館、毎年夏休み恒例の、美術専攻生によるワークショップ、今年は「彫刻にチャレンジ けずって発見石膏アート」。子どもに混じって制作しました。
色水で染め、固めた石膏をヤスリで削って、カラフルな彫刻を作るもの。3年生が前期いっぱいかけて作成した企画です。
開催中のコレクション展の豊福知徳や植木茂の木彫作品の、ボリュームを持ちながら、削ってできる窪みや穴などの虚空間を生かしている彫刻的原理が、この題材の発想の元になっています。
割と簡単に削れるので子どもも楽しく制作していました。
2015.8.4
夏休みに入った途端に講習会ラッシュ。最近は資料作りの日々で、おかげでパワポの資料作成技術が上達した感じ。
先日の講習は「まつえ市民大学美術コース」の講座で、「抽象絵画に挑戦しよう!」というのをやった。1時間半くらい話をした後、トーナルカラーなどを使ってコラージュで抽象作品を制作。平均年齢65歳の一般の受講生にいきなり抽象はどうかなと思ったけど、結構面白い作品ができた。
それにしても受講者の制作を見ていると、女性はいとも軽々と、しなやかに感性の遊びを楽しんでるのに、男は頭ガチガチで観念から解放されない。これではやはり女性の方が人生の楽しみを味わえるし、長生きもするわなぁ(>_<)。
2015.6.14
山口大学出張の翌日。
泊まりは湯田温泉の旅館、西村屋。中原中也が結婚式を挙げた旅館です。おーー、ここに中也も泊まったのか!(^−^)。朝一番で近くの中原中也記念館へ。高校時代、中也からは青春の憂鬱と郷愁をいっぱい吸い込みました。吸い込み過ぎてずっとクラクラしていた。
その後、萩に移動して萩焼の窯元、兼田昌尚のところへ。彼は大学の同級生でマージャン仲間、彫刻科の出身。大学院終了後萩に戻り、今は八代目天寵山窯を襲名している。窯を見せてもらった。すごいなー。窯元の息子なのに彫刻をやったってところがミソ。彼の作陶技法はろくろを使わず、「刳貫(くりぬき)技法」と言って、板で土の面を打って成形し、中を刳り貫いて作る彫刻的な造形志向の強い技法です。
彼に松蔭神社や萩城跡など、「花燃ゆ」コースを案内してもらって、俄然大河ドラマに興味を持つ。
益田のグラントワに寄って帰りました。
2015.5.1
ガブリエル・オロスコの国内初の大規模個展。東京都現代美術館。
さりげなく世界の成り立ちを想起させる機知に富んだ切り口。何よりも限りなく優しいそのまなざしにグッときます。
<私の手は私の心臓>
<テーブルの上の砂>
<レモン・ゲーム>
2015.3.1
出張帰りにその地方の美術館に寄るのをひそかな楽しみにしてますが、今回は徳島帰りの丸亀・猪熊弦一郎美術館。ここへはエルネスト・ネト展以来、数年ぶり2回目。
猪熊は大好きだけど、ここの企画はいつもいい。
今は「鈴木理策写真展」で、タイトルが「意識の流れ」。最近「意識」という言葉が妙に引っかかる。鈴木の写真も「今、ここ」を写しながら、観る側の意識や記憶でどこか特別な時空に連れ出される。かといってどこに辿り着くかはわからない。
鈴木も「イメージが意味を生成する手前のところを示す」と言っている。
(写真は猪熊の作品です)
2014年10月20日
ヨコハマトリエンナーレ2014(横浜美術館 新港ピア)、創造界隈拠点連携会場(BankART Studio NYK 黄金町バザール)、神奈川芸術劇場KAAT(曽谷朝絵パブリックビューイング)
1日堪能しました。横浜美術館では、アーティスティックディレクター森村泰昌解説の音声ガイドを借りてみた。森村独特の鋭い切り口で、それを優しい言葉で語っていて良かった。チケット購入時に200円で借りられます。
今回のヨコトリは森村の性格か、かなり筋の通ったキチンとした展示だった。ただちょっと古い作品が多いのが気になったけど。
BankART Studio NYK も相変わらずすごいです。主会場より迫力あるかも。必見です。
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