ニューヨーク滞在日記(その3)

前回までの2回で私が行ったニューヨークの美術館の紹介をしました。
今回はフィラデルフィア美術館とチェルシーのギャラリーです。

[フィラデルフィア美術館]

帰国の2日前、ペンシルバニア州のフィラデルフィア美術館に行って来ました。これはある日の夕食時に、Petraが自分のクラスの学生を連れてフィラデルフィア美術館で鑑賞の授業をしたこと、またそれはチャイナタウンから出発するチャイナタウンバスを使い、それがべらぼうに安いことを話すのを聞いて行きたくなってしまったからです。
ただ当日はものすごい暴風雨だったので、朝Petraは他の日に変えられないかと心配そうに言ってくれましたが、どうせどこかには行かなくてはならないのだし(私の性格から言って1日何もしないわけにはいかない)、バスで行くのだから却っていいかもと思い強行しました。
チャイナタウンバスはマンハッタンのチャイナタウンからフィラデルフィアまで片道10ドル!なので確かに安いです。大雨の中フィラデルフィアに着き(写真①)、美術館まで歩きましたが、歴史的建造物(写真②)も近代的高層ビル(写真③)も、ものすごい風と雨のため目に入らず、あのロッキーがランニングしたことで有名なフィラデルフィア美術館の階段(写真④)に着くころにはもうびしょ濡れでへとへとでした。

バスの窓からの眺め
写真①バスの窓からの眺め


フィラデルフィアの歴史的建造物
写真②歴史的建造物
フィラデルフィアの近代的高層ビル
写真③近代的高層ビル


フィラデルフィア美術館
写真④フィラデルフィア美術館

トイレに入りトイレットペーパーを靴の中に入れGパンを拭き、体温と根性で体を乾かしながら展示を見ました。
フィラデルフィア美術館は1876年、アメリカ建国百周年の際に建設されたメモリアルホールがその起源の由緒正しい美術館です。また所蔵品は30万点を数え、古代からコンテンポラリー・アートまであらゆる時代、地域、分野にわたっていて、所蔵品の質・量ともに、メトロポリタン美術館、ボストン美術館と並ぶアメリカでも有数の大美術館です。
特にロッキーなどより有名なのは、マルセル・デュシャンの作品群で、この芸術家の2つの最重要作品、「大ガラス」と「遺作」がここにあります!20世紀の美術界に多大な影響を及ぼしたデュシャンの全貌を知るうえで欠かせないコレクションなのです。
35年前に、東野芳明の痛快でなぞ解きの愉悦にみちた著作「マルセル・デュシャン」を読んで以来あこがれ続けてきた「大ガラス」(正確には「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」)と「遺作」(正確には「(1)落ちる水(2)照明用ガス、が与えられたとせよ」)に会えたことは、それだけでも苦労してきた甲斐があったというものです(写真⑤)(写真⑥)。
またこの美術館はMoMAに劣らない作品群(写真⑦セザンヌの「水浴図」とゴッホの「ひまわり」とマネ)とともに、特定の作家の作品が一部屋に集められていて、いわば個展形式の展示になっていましたが、私の好きなジャスパー・ジョーンズやサイ・トゥンブリー(写真⑧)は一部屋丸ごと楽しめて、大満足でした。

デュシャンの大ガラス
写真⑤デュシャン「大ガラス」(クリックで拡大します)
デュシャンの遺作
写真⑥デュシャン「遺作」(クリックで拡大します)
セザンヌなどの作品
写真⑦セザンヌ「水浴図」など(クリックで拡大します)
サイ・トゥンブリーの作品
写真⑧サイ・トゥンブリーの作品(クリックで拡大します)


[チェルシーのギャラリー]

マンハッタンのギャラリーと言えば、今は何と言ってもチェルシーに行かないわけにはいきません。私が滞在した12年前はまだSOHOが一般的には有名でしたが、先進的なギャラリーはもうすでにチェルシーに移っていて、私も自分ではSOHOで個展をしましたが、チェルシーにもずいぶん足を運びました。
今ではSOHOはまったくブティック街になっていて多少残っているギャラリーも身の置き場がないといった感じ(写真⑨)。一方チェルシーは当時かなり寂れた倉庫街でしたが、今では洗練されたギャラリーがずらっと並び、やけにすっきりした印象でした(写真⑩)。
チェルシーのギャラリーは10Ave.と11Ave.間で、20st.から29st.間に360ほどあるといわれています。とても全部は見るわけにはいきませんが、私はまず24st.にずらっと並ぶギャラリー[ブライス・ウォルクウィッツ(写真⑪)、バーバラ・グラッドストーン、ペースワイルデンスタイン、アンドレア・ドーゼン(写真⑫)、チャールズ・コールズ、メアリー・ブーン、ガゴシアン(写真⑬)他]を見て、25st.に行ってマシュー・マークスなどを見、22st.に回ってマリアン・ボエスキー、303ギャラリー、マックス・プロテック(写真⑭)などを見ました。これらのギャラリーはみなすごかったです。でもその辺りを見ればだいたいいいかなと言う感じでした。結構商業的なギャラリーも多いし、あまりに多くてそれ以上は足が痛くて一日では回れませんでしたし。

SOHOの様子
写真⑨SOHO
チェルシー
写真⑩チェルシー
ギャラリー「ブライス・ウォルウィッツ」
写真⑪ギャラリー「ブライス・ウォルウィッツ」


ギャラリー「アンドレア・ドーゼン」
写真⑫ギャラリー「アンドレア・ドーゼン」
ギャラリー「ガゴシアン」
写真⑬ギャラリー「ガゴシアン」


ギャラリー「マックス・プロテック」
写真⑭ギャラリー「マックス・プロテック」

最後にSOHOのギャラリーを一つ。
ニューヨークで弁護士をしているOさんに紹介されて、日本人が経営しているISE GALLERYに行って来ました。ここはそれこそユニクロなどの新興ブティックが立ち並ぶSOHOのブティック街ド真ん中の地下にありましたが、なかなかユニークなギャラリーでした。その時は3Gの映像の展示をしていましたが(写真⑮)、ここは特に日本人の作家の展覧会するのではなく、キューレターから企画をコンペとして募集して、採用したものを展示するという方式でやっていました。また、毎年夏には全世界の学生の作品を集めてコンペをしているそうです。美大生は挑戦してみては。

ISE GALLERY
写真⑮ISE GALLERY

“ニューヨーク滞在日記(その3)” への1件のコメント

  1. こにし より:

    1ヶ月遅れで読みました!それぞれの展覧会のことが具体的に書かれていて、読み応えがありました!!

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